"Tiny tiny. ma petite Moka." 知らない誰かが優しい声で私をそう呼ぶの。
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むかし、むかし。そう遠くはない昔。
雪のひどく降ったある日、ある街で幸せな3人家族を巻き込んだ事故が起こりました。
父親は亡くなり、母親は危篤状態、娘は無傷でしたが呼吸はわすかしかありませんでした。
次第に小さくなっていく娘の魂を見た人々が、もうだめだろうと哀れな小さな少女に祈りを捧げた時でした。
娘が息を吹き返し、朧げに目を開けたのです。
人々は喜び、神に感謝の祈りを捧げました。
そのときです。母親を見ていた街人が真っ青な顔で叫びました。
「おい!こっちのお母さん、息が‥!」
そう。娘が息を吹き返した瞬間に入れ替わるようにして母親は息を引き取ったのでした。
***
「タイニー、タイニー。可愛い可愛いモカ。わたしの大切なたった1人の娘。絶対に覚えていて。」
深い深い暗闇の中、どこかから苦しげな声がわたしに語りかける。
「いつか、大きくなって。うんと今よりも可愛くなって、お姫さまみたいにきれいな女の子になった貴女にね。夜空の向こうから、あのお星さまに住む王子さまが迎えに来るわ。だってあなたは、星のお姫さまなのだもの」
この声、誰かは知らないけれど知ってる。柔らかくて優しい白い掌で、優しい声で私の名前を呼ぶ人。
わたしの、
「――王子さまが迎えに来るまで、いいこにしていてね。それから、王子さまに逢ったときは絶対に素通りしちゃダメ。」
でも、王子さまがわたしを見つけてくれなかったら?
「大丈夫。お母さんの指輪をあげるから。この指輪は世界でたった一つしかない貴重なものなの、王子さまがみればすぐに分かるわ。だから、いつもつけていてね」
う、ん。あのね、わたし。体がとてもとても痛くて苦しいの。
もうここにいたくない。
「‥‥‥だめ。ママンが魔法使いにお願いして痛いのを代わってあげるから戻って。―――幸せになるのよ」
*
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